さてミュージカル部門の作品賞を受賞した「ハデスタウン」や主演男優賞に輝いた「トッツィー」、「ザ・プロム」はぜひオリジナルのプロダクションで見てみたい。楽曲の仕上がりも良いし、さすがアメリカと思わせる役者の層の厚さは素晴らしい。トニー賞授賞式では作品をダイジェストで見せてくれるので、アカデミー賞より実感できるのだ。
一番印象に残ったのは、「オクラホマ!」でミュージカル部門の助演女優賞を受賞したアリ・ストローカー。車椅子に乗りながら、圧倒的な歌唱力と声量でラジオシティ・ミュージックホールを魅了していた。衣装を替えた際に印象がすっかり変わってしまったことにも驚かされ、彼女の持つ多面性や奥深さがにじみ出たステージだった。
また、誰の言葉かは忘れてしまったが、「このご時世にジェンダー別の賞があるのって、どうなのよ?」と男優賞/女優賞という括りに対する嫌味をユーモアを交えながら語っていたが、確かにその通りだと思う。ただ、現実的に恋愛を扱うものなど、主演格に男女それぞれが配置されることも多いだけに、俳優賞ではどちらを選ぶか難しいとも感じる。なかなか難しいテーマだ。