【国立西洋美術館】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

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国立西洋美術館のロンドン・ナショナル・ギャラリー展は、コロナウイルスの影響で会期を変更しての開催。点数は思ったほど多くはないものの、名作を中心にバランスよく展示されていて見応えは十分だ。完全にではないが、概ね時代を追っての展示となっているため、イタリア・ルネサンスに続いて早くもフェルメールが登場してしまう。これは、フェルメールの「ヴァージナルの前に座る女」が目当ての僕にとっては、ちょっと拍子抜けしてしまう。この作品は3年前にダブリンのフェルメール展で見ているが、構図のまとまりや5弦コントラバスの描写が素晴らしい。

ゴッホの「ひまわり」にしてもムリーリョ、セザンヌルノワールにしても、存在感のある作品が楽しめる。そこにその絵があるだけで、思わず立ち止まって引き込まれてしまうような作品群。日時指定でそれほど混んでいないし、会話自粛を求めているので館内は心地良い静寂に包まれているのも好ましい環境だ。

そんな名作の中で、僕のイチオシはエル・グレコの「神殿から商人を追い払うキリスト」。彼が多用する赤(臙脂)、青、黄のテキスタイルをバランスよく配置した色彩を見るだけで、懐かしさのような安心感に浸ることができる。宗教画において色は隠喩として使われるが、エル・グレコの場合は色彩と構図にこだわった結果ではないかと思っている。