【映画】ある女流作家の罪と罰

落ち目の伝記作家が、有名人の手紙を偽造して古書店に売却するビジネスに転落してゆく実話をベースとした作品。シリアスな要素が強めながらコメディの風味もあり、メリッサ・マッカーシーの新境地として見応えがあった。口の悪さはお手の物だが、ブラックな世界で生き抜くず図太さを好演している。

本作では、メリッサの配偶者であるベン・ファルコーンが、メリッサ演じるリー・イスラエルの嘘を見抜く古書店主を演じており、実際の夫婦が対立する役柄を演じるという妙味も味わえる。脇を固めるリチャード・グラントは、「ゲーム・オブ・スローンズ」ではジョフリーの毒殺シーンを演じる劇団の団長を演じていたが、ちょっととぼけた小悪人という意味ではハマり役と言えるだろう。

これが実話だったというあたりが、50年前という時代の空気なのだろう。日本でも高度成長期で、平等とかダイバーシティとかが実質的には何もない「イケイケドンドン」の時代。今は消え去ってしまった「闇」が生活と隣り合わせに存在し、ある意味では世の中のバッファになっていた。それがなくなってしまった現代は、本当に生きやすい時代になったと言えるのだろうか?