【映画】ザ・サークル

Googleを思わせるネーミングの「ザ・サークル」というIT企業を舞台に、個人のすべての情報やアクティビティを統合して交流するSNSビジネスの是非をシリアスかつシニカルに見せてくれる作品。目先の利便性に目がくらんで、プライバシーの価値を置き去りにしてしまうユーザーの行動を描いている。社員に対する福利厚生が厚く、カリスマティックなCEOに踊らされるスタッフの姿も、実にリアリティにあふれている。

何よりも、キャスティングが素晴らしい。CEOを演じるトム・ハンクスとCOO役のパットン・オズワルドがいかにもハマっている。そして主人公のメイをエマ・ワトソンアサインしたことが最大のポイントだ。最初は親の医療保険などを優先させて自己犠牲的な役回りを引き受けるものの、最終的には理論武装をしっかり固めた上で上層部に反旗を翻す。セリフも行動も、いかにも実際のエマがやりそうなものになっていて、等身大の彼女を見ているような気すらした。

トム・ハンクス新型コロナウイルスに罹患したことが話題になったが、もともと演技も人柄も好きな俳優だ。回復に向かっているようだが、ネガティブな印象を世間に持たれないことを望みたい。