【映画】ハドソン川の奇跡

サレンバーガー機長は「ヒーロー」という印象だが、この映画では「アンチヒーロー」との境目をさまよった様子がドキュメンタリータッチで描かれる。あの飛行機は、果たして空港に降りるという選択肢を取ることが可能だったのだろうか。ラガーディアもJFKニューアークも利用したことがあるが、ラガーディアへのナイトフライトはマンハッタン上空でしばらく足止めされたので、ラガーディアの混雑や進入路の低さは実感を持って見ることができた。

いずれにしても、この作品が描いているのは機長だけではなく、クルーや乗客の救助に当たった多くの人たち、そして冷静に脱出した乗客たちへの賛歌である。公聴会を開く必然性は理解できるし、そのプロセスの中で彼らの「緊急時行動」の素晴らしさが浮き彫りになっていた。このような想定外の局面に遭遇したときに、自分なら何ができるだろう。それこそが、まさに本当の意味のリーダーシップなのだと思う。

エンドロールに登場する実際の機長の表情や外見を見ると、トム・ハンクスの演技のうまさや役作りの見事さがよくわかる。エンディングが唐突すぎて余韻に浸り切れないのは残念だが、エンタテイメントとしては十分に上質だ。