【映画】ポリーナ、私を踊る

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ヒューマントラストシネマ有楽町で、フランスのグラフィックノベル原作を映画化した「ポリーナ、私を踊る」を鑑賞しました。これはバレエ映画というよりは、自己実現の物語。モスクワの少女ポリーナが、ボリショイを辞めてフランスのエクス・アン・プロヴァンスからアントワープへと渡りながら、クラシックの技法を離れてコンテンポラリーに傾倒して行く展開。その中でポリーナは、自分が表現すべきもの、したいものが明確になります。

師匠のボジンスキーには「観客には美しいものだけを見せ、苦労の跡は見せるな」と教えを受けます。ポリーナも最初は親や師匠の期待に応えることがゴールだったのですが、終盤でそれは自己表現、あるいは自己実現に変化します。単なるプロダンサーからアーティストに成長して行くということですね。アーティストと貧困は似つかわしいけれど、それはアーティストのゴールが名声でも物欲でもないからだということが、この作品で実感できました。

この作品自体も素敵な芸術作品であり、特に音響と撮影が素晴らしいと感じました。ポワントがフロアを叩く音や擦る音、自動車の扉を閉めた瞬間の隔絶感、やり過ぎともいえるくらいにフォーカスを絞り、自然光の作る淡い影を活かす。静かな中に情熱と思いを秘めた、小さな宝石箱のような名作でした。ちなみに原題は"Polina, danser sa vie"で、「私を踊る」というよりは「ポリーナ、彼女の人生を踊る」という意味ですね。