【サッカーU23】アジア最終予選韓国戦

この試合のスタメンから感じた手倉森監督の思いは「韓国に勝っておきたいとは思うが、ベストメンバーで臨んだ準決勝でスタメンから外した大島や岩波のモチベーションも引っ張っておきたい」というものだった。現状のチームでベストの選択をするなら、原川であり奈良であったはずだ。その岩波はこのゲームでも軽率なプレーが目立ち、ゲームが止まっているときに韓国選手を突き飛ばしてイエローをもらっている。大島は相変わらずパスミスが多く、中盤のリズムを壊していた。

それでも勝てたのは、勝つための采配がハマったからだ。まず、1点ビハインドのハーフタイムにオナイウを外して原川を入れた。妥当な策だったものの、ある意味裏目に出てしまう。0-2となった時点で、大島を浅野に代える。前言撤回ともいえる判断は勇気が必要だったが、手倉森監督は決断した。0-2のビハインドから1点を取ると、リードしている側は慌てるものだ。しかも、浅野のゴールの1分後に矢島が続く。これで韓国は選手もベンチもサポーターも色を失った。

追いついた日本に必要だったのはリトリート、つまり試合をいったん落ち着けることだ。もともとカウンター主体だった日本U-23代表は、ここで焦らなかった。2点に絡んだとはいえ消えている時間も長かった矢島に代えて、75分に豊川を投入。この時間で3枚目のカードを切ったのは、90分で勝ちに行ったというよりは、韓国の焦りに付け込めるという判断からだったのだと思う。

浅野のゴールで逆転した後は、豊川が実に巧妙に時計を進めるプレーを見せてくれた。足が止まってパワープレーに出るしかなかった韓国は、精神的な幼さが露呈した印象だった。鈴木を負傷で欠き、南野がチームの要請で離脱、亀川と松原は万全でない中でこれだけできたのは監督の手腕だろう。しかし、オリンピック本選に向けてはこの戦力では心許ない。特に岩波と大島は主軸として期待するレベルではないことが見えてきたので、オーバーエイジを活用して戦力を補強することになるだろう。