【人事の話】既卒者の新卒扱い

既卒者、つまり卒業と同時には就職できなかった人たちを、翌年度以降に新卒扱いで採用しろという厚生労働省の意向があります。そのために助成金まで用意しているのですが、この問題はそんなに簡単には解決できません。というのも、年功的な要素を持った賃金制度である年齢級や職能給の場合、実際の年齢ではなく「卒業年齢」とか「標準年齢」と呼ばれる年齢基準によります。つまり、大卒時点を22歳とみなすのです。

この考え方によれば、一年浪人している人は実際の年齢より1歳低い設定になり、二年留年していれば2歳低い設定となります。既卒者をこの体型に当てはめようとすれば、同じ新卒でありながら年齢を1歳上に設定せざるを得ず、賃金体系として矛盾をはらんでしまうのです。何の経験もない人に、不必要に高い給料を払わなければいけないですからね。

それに既卒者であれば即日からでも就業できるはずですが、新卒扱いということは翌年の4月まで遊んでいてもらわなければなりません。その間アルバイトででも就業させればよいと思うでしょうが、そうすると同じ新卒同期の中でスタートラインが違ってきてしまい、賃金上もモチベーションマネジメント上も運用が難しいのです。

このような現実を見ようとせず、ただ「雇用」の旗印にアイデンティティも求める元市民運動家の首相には、もうすでに限界を感じます。内定時期の見直しも、建前はわかりますが、現実問題として企業が受け入れるには障害が多いのです。