【秦建日子】新刊「ダーティ・ママ」

テレビドラマ「アンフェア」の原作者にして「ホカベン」「逃亡弁護士」「ドラゴン桜」などの脚本も担当している泰建日子。彼の新刊小説「ダーティ・ママ」を読了しました。脚本家だけに、映像を想起させるビジュアル感たっぷりの描写はさすがです。ただ、リアリティを追求したせいか、犯罪現場の汚物の「これでもか」という描写にはかなり引いてしまいます。アイテムの細かい設定にも若干ついていけない部分はありますが、彼らしいこだわりも作品のスパイスになっています。

全体的な印象としては「良質なエンタテイメント」で、喜多嶋隆のように気軽で読める一方、中味もいろいろなテーマについて考えさせられるシーンが随所に仕掛けられています。主人公のコンビは、泰のドラマ「ジョシデカ」のキャストである仲間由紀恵泉ピン子がハマりそうな設定。これはおそらく、ドラマ化を意識してのものではないかと思います。

連作短編として3つのエピソードが収録されており、続編もありそうですね。脇を固める刑事たちのキャラも立っているので、シリーズ化 しても十分に続けられるのではないかと思います。「なぜ刑事が子連れで、防弾アイテムを用意してまで現場に乳児を連れていくのか?」などと考えずに、純粋にエンタテイメントを楽しみましょう!

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309019918