【スティーブン・キング】11/22/63

スティーブン・キングの新刊「11/22/63」が昨年9月に発売になり、書店で手に取ってみたのですが、僕の嫌いな二段組の上に訳が古臭かったので買わずに帰ってきてしまいました。傍点をつける翻訳は好きじゃないし、言葉が活き活きしていなかったんですよね。でも、妻が読むというので結局購入し、僕も読んでしまいました。

タイトルの「11/22/63」は日付で、1963年11月22日はJ.F.ケネディがダラスで暗殺された日です。時空を超える「兎の穴」を通じて1958年に戻れるルートをたどり、歴史を変えようとする男の話です。しかし「過去」は強情で、変えられまいとして激しく抵抗します。そして自分が変える歴史はケネディだけではなく、他の部分にまで影響を及ぼしてしまい…

展開や仕掛けはいかにもスティーブン・キングですが、明らかに映像化を意識していますね。汚いものや好ましくないものを描かない傾向のある日本の小説と違って、彼の作品は映像化したときのビジュアルが想像できるくらいリアルな描写に満ちています。日本映画は演劇的な空間ですが、ハリウッドはまさにリアル仕立てのフィクションを志向していると感じます。そんなハリウッド映画やアメリカのテレビドラマには、スティーブン・キング作品は向いているのでしょう。

終盤で出てくる世界の描写はちょっと行き過ぎで、日本の主要な島を海に沈めてしまったり、原爆が投下されていたり大地震が起きたり。あまりにも「やりたい放題」なので、閉口しました。もう少しクリエイティブに想像力を働かせて欲しかったと思います。作品自体はエンタテイメントとして楽しめますが、途中に出てくるサイドストーリーは過剰な気がしました。

http://www.kinokuniya.co.jp/c/20131024114427.html