【海堂尊】「マドンナ・ヴェルデ」の不満

トラックバック先のniphredilさんのブログで紹介されていた海堂尊(かいどうたける)の新刊「マドンナ・ヴェルデ」。これまでにこのブログでレビューを書いた「ジーン・ワルツ」「医学のたまご」の続編ということもあって、さっそく手にとって読んでみました。

僕は「ジーン・ワルツ」の評価は非常に高く、「海堂のペンは決して科学偏重に走らず、産婦人科医療が直面している現代日本の社会問題に正面から切り込んでいます。このリアリティ、そして主人公曽根崎理恵のキャラクターの明確さが読者をこの作品に引き込んでいくのです」と書きました。

一方、「医学のたまご」は、「読み始めてすぐに違和感を覚えました。この作品は、いったいどんな読者を対象に書かれているのだろうかと」と酷評し、「それほどにストーリーやワーディングのクオリティは低い作品で、よく海堂尊が短期間で<ジーン・ワルツ>の域に達したのかという新たな謎が生まれました」とまで書いています。

そして、本作「マドンナ・ヴェルデ」は「医学のたまご」に近い出来でした。何よりも、説明的な文章が多いために「小説」としての世界観に入っていけないのです。戯曲のト書きだけを読んでいるかのように、シチュエーションを会話や展開の中で見せるのではなく、ただただ文章で説明しているだけなのです。若きシングルマザー・ユミのキャラクター設定も中途半端ですし、主人公として描かれる山咲みどりの思考回路も飛躍がありすぎて、とても馴染めません。

「とくダネ!」のコメンテイターをやる暇があったら、展開力や女性のリアルな会話をマーケティングされた方がよろしいのではないかと、海堂氏に対して余計なお世話を焼きたくなってしまいました。