【マジックアワー】期待以上なのに…

三谷幸喜の監督作品は好きなのですが、この「マジックアワー」は劇場に行こうとも思わなかったし、正直それほど期待してもいませんでした。劇場公開時に三谷監督と佐藤浩市が、過剰なまでにテレビ出演をこなして宣伝をしていたことがかえって興ざめだったのです。それにテレビのスポットCMで流れていた佐藤浩市がナイフをなめ回したり、含み綿を口からはみださせながら演技している演技のシーンからも、あまり映画の良さを感じませんでした。

ところが実際に鑑賞してみると、これが良い意味で期待を裏切ってくれます。妻夫木聡佐藤浩市を騙して映画に出演させるという設定の中で、お互いが誤解したまま台詞を違う意味に解釈するあたりは、定番ではありながらしっかり観る者をつかみます。比較的まじめな役どころが多い深津絵里に、男を振り回す悪女を演じているのも、新しい一面という感じでよかったと思います。

舞台となる「守加護」は街の名前こそギャングの本場・シカゴのもじりのようですが、街の光景はサンフランシスコかロスアンゼルス、それもモノクロフィルム時代のアメリカという雰囲気です。黒澤明ヒッチコックのテイストも感じられ、古き良き時代の映画へのオマージュのようでした。

ではなぜ、この映画の良さが僕にはあらかじめ伝わらなかったのか。それは、「マジックアワー」というタイトルから本作の雰囲気を感じ取ることができないこと、そして宣伝を大衆向けにして娯楽性を過度に強調してしまったからではないかと思いました。思わず笑ってしまう場面が満載で、退屈しない映画です。

http://www.magic-hour.jp/index.html