【映画】麒麟の翼

最近はテレビでもあまり映画を見ていなかったので、かなり久しぶりになりますが、WOWOWで放送された「麒麟の翼」を見ました。東野圭吾の原作は読んでいないので、あくまで映画化された中での感想ですが、文学作品としては悪くないのだと思います。純粋にミステリー(僕は「ミステリ」という表記は好きではありません)としてよりも、もっと純文学に近いような気がしました。

さて、映画です。この映画は、日本映画の悪いところがそっくりそのまま出てしまったと言ってよいでしょう。日本映画は映画というより「演劇」の要素が強いと思っています。リアリティよりも状況説明や感情表現を重視した展開は、どうしても「嘘っぽさ」が充満してしまうのです。芝居がかった台詞、場面の切り替えや役者の表情ではなく役者に台詞で説明させてしまうところ、装置の陳腐さ、そして何よりも主役級以外の役者のレベルの低さ。これらが相まって、映画としての本作を壊しています。

小説の主題はしっかりしているだけに、情景を自分の頭の中で構築すればリアリティも得られるでしょうが、あれだけ劇場空間に仕立てられては押しつけがましさだけが残ります。社会派的な主題を扱っているからこそ、このような展開ではエンタテイメントではなく「道徳ビデオ」になってしまうのです。一方的な価値観の押しつけは、偽善でしかありあせん。阿部寛新垣結衣ら中心的なキャストはさすがの演技を見せてくれるだけに、実に残念です。

http://www.shinzanmono-movie.jp/index.html