【仏像展】アートか史料か

表題を「アートか史料か」としていながら「旅行」の書庫に入れたところに、僕の思いがあります。東京国立博物館の平成館で開催されている「仏像/一木にこめられた祈り」は、明らかに仏像を美術品として位置づけた展示でした。個々の「仏」の解説や宗教的な説明はほとんどない一方、使用された木材やその加工過程については詳しく触れられています。また、時間軸に沿ったとも言えますが、ラストに江戸時代の円空と木喰(もくじき)の作品を持ってきたあたりも、そんな意図を感じました。トラックバック先のさちこさんのブログでさちこさんも木喰が好きでないと書かれていますが、僕も同じ思いです。木喰の作品は、美術として見ればおもしろいけれど、仏像としての意義を考えると適切な表現だとは到底思えません。

先月アメリカはLAのノートン・サイモン美術館で、インドの古代美術を見てきました。それらは石像であったという点も大きな違いですが、顔の造りの違いが興味深かったです。インドの仏像の顔はあごが張った形ですが、日本の作品は丸顔で、下あごが丸みを帯びているんですよね。中国の仏像はもっと面長ですらりとした顔の形だったように思います。このあたりは、民族性というか、遺伝学的な影響もあるのでしょう。

ところで「仏」というと慈悲深さとか悟りという「静」のイメージがありますが、仏像には十二神将や四天王のように怒りや戦いを表した「動」のものも多く、実は僕が好きなのは後者です。イスラムの好戦性ばかりが目立つ昨今ですが、キリスト教も仏教も、ただ慈悲深く許してきただけではないことは歴史が証明しています。なお、この展覧会は、11月上旬に展示替えがあります。

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