島本理生「ナラタージュ」

今回の旅行中に読もうと思って買った小説だけど、一気には読めませんでした。高校在学中に賞をとった作家の作品で、教師への恋を「正統」に描ききった恋愛小説です。プロローグの描写が特に秀逸で、心の動きと、それを映す情景とが美しく、ときに切ないほどに哀しく描写されます。本編で僕が気になったのは、台詞の堅さ。「世界の中心で愛をさけぶ」のような純真でオクテな高校生ではなく、精神的には年齢以上に成熟した少女の語る言葉は、なかなか僕の心には響かないところがありました。特に、愛する教師を「あなた」と呼ぶところの違和感は、最後まで拭えなかった・・・

そして、エピローグともいえるプロットで語られる意外な展開。そして、これから彼女がつき合っていかざるを得ない運命の重さに、後ろ髪を引かれながら読了しました。時間のあるときに、ときおり情景を心に思い描きながら読むには最適な作品です。特に女性にとっては、覚えのある心象風景なのでは? この作品、お勧めです。