ウェス・アンダーソン監督の作品を少しずつ見進めている中、以前から気になっていた「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」にたどりついた。最近のアンダーソン作品は全体を流れるストーリーを感じにくくなっていたが、この作品はそうではないという話を聞いていたので、興味を持っていた。
「離散した家族が、何かをきっかけにリユナイトする」というコンセプトは、「ダージリン急行」にも通じるもの。しかし、やはり本作の方がメッセージはわかりやすい。僕が受け取ったのは、「家族の間の諍いは、直前の言動だけが引き起こすのではなく、過去から続く時間軸のどこかで起きたこととつながっている」ということと、だからこそ「過去を振り返って解きほぐさないと関係は修復できない」ということだった。
お互いがどう行動するか、その傾向は熟知しているし、過去の言動がオーバーラップして相手の人格を受容することになる。ゆえに、その言動についてのみ謝罪されたとしても、何の解決にもならないのだ。これは家族に限らず、長い友人関係などにおいても言えることだろう。
そんなメッセージを媒介する俳優陣では、ジーン・ハックマンのとぼけた演技が傑出しているし、ベン・スティラーとグウィネス・パルトロウのキャラクターへの入り込み方も素晴らしい。ジーン・ハックマンはもっとハードボイルドなイメージだったが、こんな役もできるのかと驚かされた。グウィネスは無表情な役柄をあえて貫くことで、テネンバウム家の関係を浮き彫りにしていた。