【洋書】Sensitive

「繊細」であることについて、自らが繊細であると自認するJenn GrannemanとAndre Soloがふたりで執筆した書籍のペーパーバック版。欧米にも「繊細であること」を改善すべき問題として扱う考え方があり、"Toughness Myth"と呼ばれている。繊細な人は「弱い」のだから自己変革すべきだという理屈だ。しかし、この作品の中で著者は、HSP(Highly Sensitive Person)の人が持つ長所を語る。

気配りができることは、単に「忖度」「空気を読む」に留まらず、状況を正確に把握したり、それに基づいて適切な判断を下す能力につながる。言い換えれば、繊細な人がいない組織には、間違った方向に突っ走ってしまう危険性が内在しているということだ。トップに繊細さがなければ、自分の発言が相手にどんな影響を与えるか想像できないので、組織として機能しなくなる可能性もある。

ちなみに英語にも「空気を読む」と同じ意味で"read"を用いる表現があるので、日本人だけが忖度する民族であるというわけでもなさそうだ。本著の中では、韓国人が幼い段階で親から言い聞かせられる"nunchi(눈치)"という概念についても紹介されており、これも似たようなニュアンスだ。

表紙の挿絵に使われているイラストはネコだが、本著の中では"puppy dig eyes"という慣用表現が登場する。「子犬のような目で(無言で)何かを訴えている」様子だが、これはまさに繊細な人の行動そのもの。繊細さによって何かを感じているのに、それを表現することがためらわれてしまう状況を排除できれば、組織やコミュニティはよい方向に向かってゆくはずだ。