【パリオリンピック最終予選】北朝鮮―日本

女子サッカーパリオリンピック最終予選は、直前まで会場が決まらないという異常事態の中、試合開始時刻で気温31度のジッダで開催された。ヨーロッパのクラブでプレーする選手の移動疲れもあったとは思われるが、この高温の下では攻守の切り替えが遅れてしまい、好機を演出することがなかなかできなかった。

熊谷をアンカーに入れ、その前に長野と長谷川を並べる3ボランチを選択した池田監督。藤野が右サイドをえぐってもゴール前で受ける選手が足りず、左サイドは植木が仕掛けられない状況が続く。結果的に田中が孤立してしまったのも、この熊谷アンカー起用が影響していた。

仕掛けられない植木を58分には中嶋に代え、さらには69分に中盤の梃入れで熊谷と長野を下げ、清家と谷川を投入する。NHKの放送席は「意外な交代」と受け止めていたようだが、僕としてはボランチ3人のところで切り替えができず、横パスの応酬になっていたので、点を取りに行くシフトとしては必然に思われた。

これによってサイドからの崩しに成功する場面は増えたのだが、残念ながらゴール前の状況は変わらない。相変わらず田中が消えている時間が多く、いわゆるトップ下がいないことが浮き彫りになってしまった。

恐らく、日本ホームの試合も似たような展開になるだろう。気温が一気に下がるとはいえ、中3日の連戦で運動量には期待しづらい。籾木がいれば適任なのだが、彼女を招集していない以上、長谷川か長野をもっと前でプレーさせる必要がある。サイド一辺倒ではなく、もっと中から崩す選択肢も用意すべきだろう。

いずれにしても、ファーストレグのMVPは間違いなくGK山下。危ない場面が何度もあった中で、安定したプレーでゴールを守り切った。もともと仲間に感情をぶつけることも多い性格だが、この日の表情を見る限り精神的な成長も感じられた。