【女子ワールドカップ】日本―スウェーデン

今から書いても「後出し」にしかならないが、準々決勝のスウェーデン戦では自分たちの本来のスタイルを100%発揮して臨んで欲しいと思っていた。しかし、結果的にはスウェーデンの高さと右からのクロスを警戒したゲームプランになってしまい、起用された選手の違いも活かせずに敗退することになる。クロス対策として遠藤に代えて杉田を起用したのだが、これまで遠藤が効果的に組み立てに参加していた一方、杉田はプレーの質は高いものの連携というか次のプレーのイメージが異なるためにいまひとつ噛み合わない。相手に合わせた布陣を敷いたために、自分たちの強みをひとつ捨てる選択をしたのだが、これも敗戦の要因になっているだろう。

戦術面では、お互い深いDFラインを敷く中で中盤が間延びしてしまい、長谷川と長野の距離も空いてしまう。宮澤へのサポートが薄くなったのも、この影響だ。日本としてはクロスを上げられたくないし、スウェーデンは裏を取られたくない。お互いがDFラインを低く抑える中で、広大な中盤ではスウェーデンの早いプレスが効果的になり、日本はリズムを作れなかった。選手間の距離が開きすぎて、長谷川も長野も判断が遅れてしまったことが悪いサイクルのはじまりだったといえる。特に長野の出来はよくなかったので、もっと早いタイミングで林を投入したかった。確かに長野がところどころ悪くないプレーを見せるので判断は難しかったが、大局的に流れを変える必要があったのだから、ボランチの交代は意味があったはずだ。

また、米国相手に120分戦って試合の感覚も1日短い相手が疲れてくるところに植木を使う狙いはよくわかるが、フィジカルの弱さを露呈してしまい追撃ムードを作れなかった。スペイン戦で蹴り直しになったもののPKを外していたのだから、ここで獲得した重要なPKを彼女に蹴らせたことについても疑問は残る。あの展開の終盤なら、経験も技術もある田中美南を残していたら、局面は大きく変わったかもしれない。また、植木も藤野もGKの上を狙っていたのは、スカウティングからの指示だったのかもしれないが、それにしても難しい選択をしたものだ。かえって技術を使えず、思い切りも鈍くなってしまったのではないか。

僕が一番不満だったのはCK。相手の高さを警戒してショートコーナーに行くのだが、クロスすら上げられずにロストしてしまうシーンが相次いだ。相手によって戦術を変える必要がないとは言わないが、スペイン戦での「PLAN B」のカウンター発動による大成功に酔い過ぎて、自ら流れを手放してしまったのではないか。池田監督が米国女子代表監督候補という記事も目にしたが、複数の戦術での勝利という幻影に囚われてしまったとしたらスペイン戦の勝利は逆効果だったし、敗れたスペインが準決勝に進出したという事実は何ともシニカルで悔しいものだ。