【ドラマ】メシア

2020年のドラマだが、パレスチナに端を発して、神の再生を騙る主人公が実はバルト諸国への侵攻を企てているロシアのスパイではないかという含みをもたせているところは、まさに現在の世界の流れを映しているように見える。中東での展開が中心かと思いきや、米国に移動して一気に政治色が強まる流れは意外ではあったが、そこから面白さは増したように感じた。それは、見慣れているストーリーに収束していったからかもしれない。

パレスチナの人々は生命を維持する食物にも苦労する中でもゆるぎない信仰を持っている一方、米国ではフェスさながらに寄り集まって騒ぎ、そこには信仰や主張よりも自己満足やSNS映えを求める。マスメディアは表面的なコメントを求め、カトリックの牧師の娘が中絶するという展開まであって、誇張はしているもののいかにもありそうな現実的描写になっている。シニカルな視点が背景になっているようにも見受けられ、作り手側の意図がいろいろと透けて見えた。

俳優陣は玄人好みなキャスティングで、「シカゴP.D.」で署長役だったバーバラ・イブ・ハリスや「ホームランド」で大統領を演じたボー・ブリッジスなど、実力はが湧きを固める。主人公アル・マシーフ役のメディ・デビも、独特のカリスマ性を発揮して存在感を示していた。最終話では、次につなげるどんでん返し的な状態で終わっているが、ある意味クリフハンガーで打ち切りになってしまったところは残念だ。