【ドラマ】グレイズ・アナトミー シーズン19

シーズン19を数える長寿番組「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」から、主役のメレディス・グレイがいなくなった。シーズン19の第7話で、娘のゾラの不安障害に対処するためにボストンに転居するという形でグレイ+スローン病院を去ることになったのだが、タイトルに「グレイ」がつけられている作品だけに喪失感は大きい。「ER」ジョン・カーターや「スーツ」のマイク・ロスも主役の降板でもタイトルキャラクターではなかったが、メレディスがいない「グレイ」とは何なのか。

もともと、演じるエレン・ポンピオの降板は噂されていたが、シーズン17でコロナ感染から死の淵を彷徨っていたメレディスが幻想の中でデレクと再会するなど、終わりそうな雰囲気を醸し出しながら復帰していたので、何となくおさまりの悪い中途半端な幕引きになってしまった感覚が否めない。今のシーズンでは、スピンオフ「プライベート・プラクティス」の主役でもあるアディソンを中絶問題と絡めて登場させたり、「ステーション19」との連携も強化している印象があるが、そのあたりの準備が必要だったのかもしれないし、逆に窮余の策であるとも考えられそうだ。

このシリーズでは中絶問題など、重い社会テーマに深く切り込んでゆく姿勢も見せている。ションダ・ライムスの意志と意図ははっきり伝わってくるが、それを依然と変わらないコミカルな要素でくるんでいるところも、また彼女の意志だろう。

ジョー・ウィルソンが産婦人科に異動していたことも、中絶問題に切り込む前準備だったのかもしれない。マギーもシカゴに移る一方、アディソンが出番を増やしたという事実からも、ションダが何を描きたかったのかを物語っている。メレディスの降板も、中絶問題に切り込むために、それ以外の要素を削ぎ落す施策の一つなのだろうか。シーズンファイナルで、産婦人科クリニックを創設したミランダ・ベイリーにキャサリン・フォックス賞を受賞させたことは、その集大成だと言える。