【HISオンラインツアー】ベツレヘムのストリートアート

HISのオンラインツアー「ストリートアートをめぐるロンドン&ベツレヘム街歩きツアー」は、ストリートアートや現地事情に詳しいガイドによる中継をつないで、このツアーの企画者でもある澤村さんが東京で進行するもの。バンクシーの流行に乗った薄っぺらい内容ではなく、ブリックレーンの状況やパレスチナ問題まで語る骨太な内容で充実していた。

この記事では、その中でも特にベツレヘムイスラエル側とパレスチナ側を隔てる分離壁に描かれたアートで構成してみたい。中東はなかなか情報がなく、エルサレムはまだしもベツレヘムの情報はほとんど皆無に等しいからだ。

バンクシーは旅行者としてベツレヘムを訪れ、分離壁などに作品を残す一方、ホテルを開業している。分離壁の目の前にあるこのホテルは「世界一眺めが悪いホテル」を謳い文句に、ニューヨークの最高級ホテルであるウォルドルフ・アストリアをもじって「The Walled Off Hotel」と名づけられている。

以下の3枚の画像は、オンラインツアーの中で撮ったスクリーンショット。爆弾の代わりに花束を投げるレジスタンス、平和の象徴である鳩が防弾ベストを着ているもの、そして壁に穴を空けた様子を描いたもので、いずれもバンクシーの作品だ。

中継の途中で電波の状況が悪くなって打ち切られてしまったが、ガイドはこれから分離壁のコントロール・ポイントを通過して帰宅するそうで、その車列がまったく整然としておらず、なかなか進まない。ひとつの生活圏が壁で分断されているのだが、20歳くらいまでの若者は壁がない状態の街を知らないので、これが当たり前になってしまい、壁の反対側に何があるかも理解していないとのことだった。

もともとは英国の二枚舌外交によってもたらされたイスラエルの建国が、中東戦争の火種となり、今もアラブ側との対立は続いている。ちょうとNetflixで見ているスパイのドキュメンタリー「Spy Ops」で、ミュンヘンオリンピックにおいてイスラエル選手団がアラブゲリラに襲撃された事件を扱っていたこともあり、価値観の相違が引き起こす問題の根深さを痛感していたところ。価値観が異なれば、お互いの正義は一致しないのだから、「話せばわかる」はずがないのだ。

そんな中、このストリートアートはウィットが効いていて、いかにもグラフィティらしさがあるメッセージが籠められている。「Hummus(フムス)」とは中東料理の定番で、ピタパンに塗って食べたりする「ひよこ豆のペースト」のこと。僕の好きな料理でもあるので、思わずうなずいてしまう。

ウェストバンク(ヨルダン川西岸地区)を訪れる機会はなかなかないと思うので、このような体験をさせてくれたHISには感謝している。これこそが、オンラインツアーの魅力というものだろう。