【ドラマ】オスロの少女

ノルウェーイスラエルが製作したドラマ「オスロの少女」は、オスロというよりもエルサレムガザ地区シナイ半島を舞台に繰り広げられる人質奪還の物語。オスロ合意によって先延ばしにされたパレスチナ問題をテーマに、パレスチナ自治政府としてガザを支配するハマースとISISによる駆け引きが絡む中、要人を絡めての政治的な思惑が交錯し、状況は悪い方向へ進んでゆく。

パレスチナの状況が非常にリアルに描かれており、イスラエルパレスチナ、西欧の関係がオスロ合意をキーワードにうまく整理されているので、忘れかけていた中東の歴史にあらためて目を向けさせられた。主人公ともいえる人質の母アレックスは、オスロ合意に絡んだ人物として設定され、イスラエルパレスチナの関係者とのコネクションを使って強引に娘を取り戻そうとする。自分勝手な理屈では相手を説き伏せられずに、かえって状況を悪くするのだが、そのあたりに母の強さと弱さが凝縮される。オスロ合意そのものだけでなく、そのときに起きた個人的な出来事が因果応報となって降りかかるってくる。人間関係にはリアリティがないが、それを描写と演技で見事に補っていると言えるだろう。

序盤では、その設定の無理やりさから没入するのが難しいが、徐々に深いテーマに引き込まれてゆく。1話30分強なので、全10話とは言ってもあっという間だ。自分が平和な環境で、安全を享受しているのだということを、あらためて思い知らされる作品でもある。