【ドラマ】ロスト・シンボル

ダン・ブラウン原作のドラマ「ロスト・シンボル」全10話を見ながら思っていたのは、「原作もこんな展開だったっけ」という違和感と「この内容では映像化は簡単ではなかっただろう」という納得感だった。ロバート・ラングドン教授シリーズの中では映画化されていない作品になっていたが、「シンボル=象徴」に深く入り込んでいるだけにわかりにくいし、文字を映像にしてもかえってそれを助長するだけのようにも思えたからだ。一方の違和感は、もっと細部を捨ててエンターテイメントに走ってもよかったのではないかという思いでもある。

アクションとロマンスの要素も多分に含まれるだけに、映画同様トム・ハンクスを起用するのは無理があった。アシュリー・ズーカーマンは意外にハマっている感じもあったが、僕の中では「サバイバー:宿命の大統領」のピーター・マクリーシュなので、どうしても悪人に見えてしまって収まりが悪かったことも事実だ。また、ヴィラン的な位置づけであるマラークを極端に描いたことで現実味が薄れてしまい、議会警察のヌニェスはコミカルな要素を過度に出したために中途半端な位置づけになってしまった。

その意味で、演出とキャスティングが破綻していたということだが、これでは次のシーズンを見据えた終わらせ方をしていながらも、更新には至らなかったことも納得できる。本作の謎である「象徴」を追うために映画ではなくドラマでじっくり描こうとしたものの、余計な要素を入れ過ぎて本筋を見失ってしまった。誰に向けて何を見せるべき作品なのか。それは、企業にとってはマーケティングそのものであり、これがブレてしまえば視聴者に届くものが見えなくなってしまうのだ。