【ウィンブルドン】バエス―ダニエル太郎

ちょっとした差のようにも見えるが、でもその差は大きい。そんな印象のウィンブルドン男子シングルス1回戦だった。序盤からブレークチャンスを何度も握ったダニエル太郎だったが、大事なポイントを落とさないバエスの勝負強さの前に、なかなかリードを奪えない。バエスダブルフォルトを犯すなど、隙はいくらでもあったように思うのだが、絶好のチャンスで相手のいる方向へ返してしまう場面も続き、もどかしい展開が続いた。

その中でラインジャッジの判定ミスがあったり、コードボールがバエスに有利に落ちたり、ラインに乗ってイレギュラーして自分が不利になったりと微妙なプレーは確かに多かった。それらの一つでもものにしていれば、流れは変わったのかもしれない。それくらい、微妙な試合だった。勝負を分けたポイントは、判断の速さではないかと僕は感じた。バエスの早い仕掛けと勢いのあるショットに焦ったダニエルは、ラケットの面をどう合わせるか、バックかフォアかといった判断に迷いが生じてしまい、さらにそこにつけこまれてボディを狙われたりロブを上げられたり。ある意味、ダニエルの自滅だったように思う。

それにしても、ダニエルの前に出るプレーの改善ぶりには目を見張らざるを得ない。ステイバックしてカメラに映らない時間が続くような選手だったはずが、しっかりとネットプレーを仕掛け、ボレーを巧みに決める。それで裏目に出ることもあるが、プレースタイルを変えたばかりなのだから、少しずつ伸ばしてゆけばよい。30代とはいえ、選手寿命はまだまだあるはずなのだから。