【天皇杯準決勝】川崎―大分

「まさか」としか言いようのない展開と結果だった。その証拠に、僕はエンリケトレヴィザンの同点ゴールを見逃した。先制されて跳ね返す力があるとは思っていなかったし、エンリケトレヴィザンを上げてパワープレイに出てくれたということだけで、すでに満足してしまっていたのだ。ところが、NHK実況のトーンが変わったのであわててモニターに目を戻すと、ゴールネットが揺れ、エンリケトレヴィザンを囲む輪ができつつあった。

ゲームプランは完璧だった。いつか見たいと思っていた4バックを採用し、ペレイラのボール奪取能力とエンリケトレヴィザンの読みで、レアンドロ・ダミアンに仕事をさせない。伊佐と小林成豪は高い位置からプレスを掛け続け、全体の切り替えも速かった。交代カードも絶妙で、相手が疲れてくるタイミングで井上と松本というスピードスターを投入して背後を突き、最後に長沢を入れて高さを得た。PK戦まで想定すると、長沢より渡邉を残しておきたい気もするが、セットプレーの方がチャンスはありそうだったから、この交代もアリだろう。

それにしても高木は当たっていた。何本、川崎のシュートを止めたことか。そしてPK戦でも、僕は期待していなかったのだが、とんでもないレベルの集中で止めてくれた。そもそも、大分の1人目の下田は失敗していた。ポストに跳ね返ったボールがチョン・ソンリョンの背中に当たってゴールインする幸運があったおかげで、救われただけだ。決めていれば勝った場面で小林裕紀が失敗したが、顔が引きつっていたから止むを得まい。7人目の町田で終わってくれて、順番としてはラッキーだったとも言えるだろう。

決勝の相手は浦和。決して苦手意識はないはずだ。登録の関係で夏に加入してきた選手は使えず、負傷者も気になるが、それでも大分が勝つチャンスは十分にあるはずだ。