【ジャズ】チック・コリアを悼む

チック・コリアの訃報をTwitterで知り、率直に驚いた。ここ数日、頭の中で彼の音楽がリピートしていたからだ。学生時代に所属していたポップス・オーケストラで演奏した"Central Park"や"Night Streets"、それに名曲"Spain"。どの曲もドラムスやベースラインなど、細かいところまで意外なほどに覚えている。

彼の生み出す音楽は、どことなく不完全な印象がある。クラシックのソナタ形式のような様式美は一切排除され、もう1~2小節加えた方が収まりがよさそうなフレーズを淡白に終わらせてしまう。メロディの前半が細密に作りこまれているかと思えば、後半はただ和音だけだったり。おそらく彼は天才肌で、ジャズプレイヤーらしいインプロビゼージョンを大切にしているからこそ、過ぎ去った音を振り返ることはないのだろうと思う。次の音が今の音にどう作用するかを、先天的にとらえて紡いでゆくのがチック・コリアの音楽ではないかと思うのだ。

訃報を知らせるニュース記事のチック・コリアも、いつものように存在感にあふれ、ちょっと気難しそうだけど柔和な表情を見せながら、鍵盤に向かっていた。学生時代に弾いたソロやヴァイオリンに出番のなかった曲で刻んだクラップハンズを思い出しながら、またアレクサにチック・コリアをかけてもらうことにしよう。