【全豪オープン】大坂なおみ―ムグルッサ

良い意味で、疲れる試合だった。すべてのショットに意味があって、その結果がポイントに表れてくるから、プレーのひとつひとつを見逃すことができないのだ。序盤こそ、いつものようにエンジンのかかりが遅い大坂と硬さの見えるムグルッサ、ふたりともぎこちないスタートでどうなることかと思ったが、結果的には素晴らしいクオリティまで引き上げるのだから、さすがとしか言いようがない。この試合では特にテクニックの問題ではなく、メンタルをいかにコントロールできるかという点に見応えがあった。

ムグルッサは最初のサービスゲームを落としたことで吹っ切れた印象で、そこからは緻密で隙のないプレーが蘇った。大坂はサービスのトスアップがなかなか整わず、背面深くに投げ上げてしまう場面が目立ったように思う。風もあったようだが、それよりも、強いサーブを叩き込みたいという思いが強すぎたのではないだろうか。その証拠に、196km/hという高速サーブを含む11本のサービスエースを決めているが、ファーストサーブのパーセンテージは、試合が進むにつれてどんどん悪くなっていった。

セカンドセットで先にブレークを許した後は一時的に修正できたようで、それもあって大坂がセットオールに持ち込む。ファイナルセットも先行された大坂だったが、ムグルッサが2本のマッチポイントを握ったあたりからメンタルをコントロールし直して、ストレートで攻めたいムグルッサに対し、無理をせずバックハンドのラリーに持ち込むことで流れを掴む。土壇場で追いつかれたムグルッサの心の乱れを突いて、最後は一気に押し切った。

試合が終わった瞬間に、見ていた僕も集中から解き放たれて一気に疲れを感じだほどだ。この大会は男女とも競り合いの好試合が多いが、男子はジョコビッチナダルが絡まない試合の方が盛り上がっている印象がある。新たなチャンピオンの出現に、思わず期待したくなる展開だ。