【J入替戦】天国と地獄

入れ替え戦は、まさに天国と地獄だが、これほどまでに選手の表情にそれが出てしまう結果になるものかと思った。結果については敢えて書くまでもないだろうが、甲府がバレーの2得点でリードしたところに永田が退場。さらに4点を叩き出したバレーのダブルハットトリックの活躍で、甲府が昇格を手にした。

地獄を見た柏で象徴的だったのは、土屋だ。試合の中盤までは、鬼気迫る表情でオーバーラップを見せ、なんとかしようと行動で示していた。絶望的な差がついてしまい、表情に覇気を失いながらも、汗まみれになって上下動を繰り返す。そしてセットプレーの際にアップになった彼の唇は「フランサ! サポーター(がいるんだぞ)!」と動いたように見えた。すでに勝負を投げてしまったような柏の中で、彼の必死さが痛々しかった。土屋は今年、浦和・田中達也の負傷の一件もあり辛い一年だったことだろう。そんな人間味を見せ付けられて、僕は土屋という男が好きになった。

天国を味わった甲府の象徴はバレー。涙と汗と鼻水に、さらにかぶった水が渾然一体となったズブ濡れの表情で、さかんに仲間とサポーターがいる方向に視線を送りながら興奮を隠そうともせずにインタビューに答える彼を見て、涙が出そうになった。JFLでも長い歴史を持つ「甲府クラブ」を母体とする老舗クラブが経験した経営危機を考えれば、これは奇跡とも言える出来事だろう。甲府の関係者には、おめでとうと、そしてお疲れ様と言ってあげたい。