人事から見たウィルスバスター事件

トレンドマイクロ社のアンチウィルスソフト「ウィルスバスター」によって、システムがダウンするなんて冗談のような話が現実に起きてしまった。同社は普段は行っていない電話による24時間の対応を、この土日に実施したらしい。それは現実問題やらざるを得なかったのだろうが、人事が本業の僕にとっては実に興味深い危機管理のモデルケースであった。

土日でのインコールが17万件で、個人ユーザーが大多数であることを考えれば、1件あたりの処理時間も相当な時間になったことだろう。普通であれば、まず回線がパンクする。そうなれば近隣の電話回線にも影響するし、怒るユーザーにさらに怒りの種を与えてしまうことにもなる。そして、次には電話に対応する人員を確保することだ。この手のケースでは、いきなり派遣を集めてもトークスクリプトの教育もできないし、ただ謝らせておくしかない。トークのスキルは無視しても、ソフトの内容や会社のことは少なくとも理解している社員を呼び出すのが常套手段だ。しかし、ただでさえロイヤリティの薄いITプロフェッショナルにこんな業務をやらせれば、嫌気がさすのは明らかだ。

結論。この事件は、ユーザーの信頼を失うという問題以上に、人事は社内のリテンション(退職防止)を真剣に進めなければならないケースである。同社の今後の動向を、興味を持って見ていきたいと思う。