星空を眺めて

小学生のころ、クリスマスプレゼントとしてやっとの思いで手に入れた反射望遠鏡で、よく星を眺めていた。月や木星など、太陽系の天体が一番見やすかったけど、「すばる」のような散開星団も好きだった。だけど、僕はつくづく自分が理系ではなく文系だと思うのは、星を見ながらも天文学の方向に興味を募らせるのではなく、ギリシャ神話に走ったこと。

ほとんどの星座には、その根拠とも言うべきストーリーが用意されていて、それを知った上で星空を眺めると違った楽しみ方ができた。夏なら鷲座・琴座・白鳥座で七夕という物語は、日本でもよく知られている。ギリシャ神話では、例えば冬の星座オリオンが死んだのはさそりの毒のせいで、だからオリオン座はさそり座が空に昇ってくると西の地平に姿を消してしまうとか。他にも、王女アンドロメダの物語では王であるケフェウスとその妻カシオペアが登場する。

今となってはほとんど忘れてしまったが、小学生の僕のテキストだった「スズキ星座図譜」という天体図と神話の事典のような本を、捨てられずにまだ持っている。自然科学にも人文的な要素を加えて見ることで、また違った楽しみ方ができる。別に方程式を解いたり、新しい元素を見出すことだけが自然科学の魅力というわけではないのだろう。