【ルノワール展】構成で魅せる

東京・乃木坂の国立新美術館で開催されている「ルノワール-伝統と革新」は、構成の巧みさが印象的な展覧会でした。展示されている作品の中に、特に目を引くものはそれほど多くありません。しかし、対象物をうまくカテゴライズしていて、観る側の頭の中を整理してくれます。最近は絵画を、芸術作品としてよりも博物として研究対象とするケースも多く、キュレーターがそんな趣味に走ることも多いのですが、今回のような展示をしてくれた方が画家の思いが伝わってくる気がするのです。

一番の見どころは、MFA(ボストン美術館)所蔵の「ブージヴァルのダンス」。踊っている若い女性の表情に、うまく視線を集中させる構図が秀逸です。ルノワールの作品では、肌の白さを際立たせる赤や青の陰影が使われることが多いのですが、やや日に焼けた感じの黄味がかった肌色にも、見るべきものがあることに気づかせてくれたのは「泉」。同じ対象と構図で、やや焦点をぼかし気味に描いた作品との対比が興味深いところです。

北九州市立美術館所蔵の「麦わら帽子を被った女」は、普段はデフォルメされたような愛らしい表情を描くことが多いルノワールにしては、妙に真剣な眼差しの描写になっていて特徴的でした。国立新美術館の構造上、どうしても無機質な展示になってしまうのは仕方ないところ。集めた作品で、来場者を最大限に楽しませることは十分にできていたように思います。

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