【南アフリカ戦】一歩後退の成熟

ボールは支配できる。パスは回る。しかし、それだけだった。南アフリカ遠征で見せた日本代表のチームパフォーマンスは、まるでポポヴィッチ体制に移行してからの大分トリニータのサッカーを見ているかのようだった。

岡崎は何度か惜しいチャンスを作れてはいたのだが、大久保のプレーは精度を欠き、内田と本田は選択を誤ってはボールを失うシーンが目についた。それを生み出してしまった根源は何か。それは、チェンジ・オブ・ペースの不在だ。速いパス回しとポゼッションがなまじできてしまったがために、ボールを止めて「タメ」を作るシーンがほとんど見られなかった。

タメがなければ押し上げができない。前に前に人もボールも動いていては、ゴール前を固める守備陣を剥がすことはできない。チャンスに見えても、実はシュートコースは切られていたのだ。本気とは思えない相手と戦った親善試合で見せた成熟は、幻だったようだ。強豪との対戦でポゼッションすらできなくなったときに、局面を打開する術を彼らは果たして持っているのだろうか。