【オバマ来日】演説の意味

米国のバラク・オバマ大統領の来日で、東京には警察官があふれた。たった2日間の滞在で、しかも鳩山首相は一足先にシンガポールに発つという微妙な日程だった。軍の銃撃事件による追悼式出席というスケジュール変更があったとはいえ、「シンガポールに行くためのトランジット」とも思えるような来日だった。

ただ、オバマ大統領の東京・サントリーホールでの演説は好評だったようだ。産経新聞は<「アジア・太平洋で指導的役割」都内で演説、日米同盟を強調>という見出しで伝えているが、興味深いポイントはそこではないし、この見出しの発言がどの部分の要約なのか僕にはよく理解できない。ポイントはアジア太平洋の位置づけを、自らのインドネシアでの生活や姉が中国系カナダ人と結婚したことと絡め、さらにアジア系アメリカ人の米国での貢献について触れたことだ。

そして彼は、アジア太平洋地区を「This is where we engage in much of our commerce and buy many of our goods. And this is where we can export more of our own products and create jobs back home in the process.」と米国製品の輸出先として、さらには雇用創出の源として位置づけた上で、核の驚異に晒されている事実につなげたのだ。

極めて現実的な判断ではないか。おざなりにアジア太平洋との友好を述べたのではなく、米国にとっての実利的な効用をはっきりと説明したところに、彼の率直さがうかがえる。ただ、それは政治家として、米国大統領としての期待感にはつながっても、実行力そのものではないことに注意しなければならないだろう。