【ワイエス展】荒涼とした統一感

東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで始まった「アメリカを描ききる アンドリュー・ワイエス 創造への道程(みち)」を鑑賞しました。ワイエスアメリカ人の画家で、初期は水彩を中心に、そして途中からはテンペラ画を多く描くようになります。展示は絵画のモチーフによって分けられていて、これが非常に見やすい。例えば冒頭に自画像があり、彼がいかにもアメリカ人的な風貌であることが理解でき、以降の絵画の鑑賞にも良いガイドラインになっています。

展示されている作品の多くは、メイン州ペンシルベニア州の田舎の風景を描いています。そこに感じられる茶色をベースとした「荒涼」が、展覧会全体を貫く統一感として存在していました。彼の作品は陰影が非常に鮮やかに描かれており、そのアクセントの置き方からイラスト風に見えるものもあります。モチーフは古臭いものでありながらタッチや画風にモダンな雰囲気を感じるのは、陰影がうまい具合に作品の平板さを補っているからではないでしょうか。

もう一点、この展覧会の特色は、習作と完成された絵画が並べて展示されているものが多くあることです。習作から本作に至るまでに構図やアングルが修正され、最終的に画家が「完成」と判断するまでのプロセスがわかるようで興味深く鑑賞できますよ。中には、僕の目には習作の方が良い出来に見えるものがあったことも、付け加えておきます。

http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/08_wyeth/index.html