【ルスランとリュドミラ序曲】アンコールの定番

北京オリンピックのシンクロナイズド・スイミング、テクニカルルーティーンを見ていたら、北朝鮮チームがデュエットの曲に「ルスランとリュドミラ序曲」を使っていました。この曲はロシアの作曲家グリンカによるオペラの序曲として書かれたもので、近代ロシアらしい全音音階を使いながら軽快で陽気に展開される明るい楽曲です。

僕がはじめてこの曲を聴いたのは、とあるオーケストラの演奏会でアンコールとして演奏されたときです。アンコール曲には、演奏時間が5分程度で派手に明るく盛り上げるか、場合によってはしっとり聴かせるかのどちらかを想定することが多いですね。最近の演奏会ではアンコールで演奏した曲の曲名を出口近辺に掲示してくれることも多いですが、それでもあまりマイナーな曲は向きません。指揮者が棒を振り下ろして最初のフレーズが鳴った段階で、「ああ、あの曲か!」と聴衆が判別できる曲がふさわしいと言えます。そしてもうひとつ、「演奏会の最終曲で舞台に載っているメンバーから大幅に変更しなくても演奏できる」ことも重要な要素です。

同様にアンコールの定番として演奏される明るい曲調の楽曲に、レナード・バーンスタイン作曲の「キャンディード序曲」があります。どちらも舞台用に作曲された組曲の一部ですが、舞台を実際に鑑賞された経験のある人は少ないのではないでしょうか。アンコールの定番として、単独で親しまれている楽曲なのです。シンクロの曲としてもなかなか合っていて、井村コーチの中国チームが使ったハチャトゥリアンの「剣の舞」よりは、音楽通向きなように思いました。