【ファイターズ】最後まで役者新庄

涙を目を腫らしながらフルスイングで空振り三振を喫した、SHINJOの現役最後の打席。最終回の守備についてもその表情は変わらず、ゲームセットを迎えても胴上げされても、涙顔はそのままだった。それはそれで彼の運の強さなんだろうし、こんなに劇的なシナリオを演じ切ってしまうのも彼ならではだろう。

中日と日本ハムの差は、選手の闘志を前面に出させたかどうかではないだろうか。落合博満もできていなかったわけではないが、伸び伸びと100%以上の力を発揮したのはファイターズだったように思う。ヒルマン監督にうまく操られて、若いダルビッシュ武田久武田勝も、野手では田中賢介も成長しながら結果を残した。金村の「事件」も、こういう結果に終わってみれば、素晴らしいドラマに添えられたひとつのエピソードになってしまった。

今日の流れを引き込んだのは、ベテラン金子のスクイズだった。ここで同点に追いつかれた川上-谷繁のバッテリーの表情が、流れを失ってしまったことを如実に物語っていたから。そして、こういう試合で一番恐い一発が、中日にとっては一番打たせてはいけないセギノールに飛び出す。ここから新庄の涙までの展開は、神が用意したとしか思えないような出来すぎたものだった。

北海道のファンがこれだけ盛り上がったのだから、東京時代からのファイターズファンもきっと移転が成功だったのだと納得することだろう。25年前に後楽園球場のスタンドで、西武に敗れたプレーオフを観戦していた僕も含めて。