【Always/三丁目の夕日】若手が好演

西岸良平の原作は、もっと牧歌的に感情の起伏が小さい印象があるけど、映画化としての作りは過剰でも物足りなくもなく適度だったと思います。主役の作家が芥川ならぬ「茶川龍之介」で、少年が吉行ならぬ「古行淳之介」でしかも母親が和子っていう部分はベタな設定なんだけど、この原作のマンガもそんな感じなんです。「原作の雰囲気を残しながらも、映画としての構成に持ち込む」という課題はクリアしていたのではないでしょうか。

役者陣では須賀健太が子役とは思えない素晴らしい出来で、堀北真希も期待以上でした。原作のよさである「どこか非現実的な、超越したような感じ」がよく出ていたのは三浦友和もたいまさこ、それに小雪でした。主演の吉岡秀隆は悪くないけど、あの声の軽さは作品の出来に影響を与えてしまっています。ただ、吉岡と堤真一が取っ組み合いのケンカをするんだけど、すごくチャチな印象を受ける。吉岡の声も含めて、この時代の「大人の男」に課せられた期待感、つまり「大人の男としてあること」ってもっとバーが高かったんじゃないかな。

セットや衣装も昭和の雰囲気を伝えてくれるけれど、ちょっとみんな小奇麗すぎかな。敢えて現実感を抑えたんでしょうけど… ストーリーとして泣かせてくれるのは「映画の出来」によるものだけではないので、僕のこの映画への評価は世間よりも少し厳しめです。