ヴァイオリンを弾き始めたころ

僕がヴァイオリンを始めた理由は、偶然でしかない。高校に入学して数日めの、とある東京郊外の乗換駅で電車を待っていた僕は、室内楽部の勧誘を受ける。その中の一人が友だちのお兄さんだったし、興味もあったので、説明会に行ってみた。生まれてはじめて弾かせてもらったヴァイオリンは、音らしい音など出せなかったが、それまで「金持ちの道楽」のような印象があったこの楽器が、実は気さくな普通の人に見えた気がした。

レッスンの最初は、まず楽器の持ち方。顎で楽器を挟む練習だけで数日が過ぎ、それからやっとボウイング、つまり弓を動かすことに映る。運指など、まだまだだ。音楽に興味のない子どもだったら、この辺で嫌になっちゃうだろうね。

ヴァイオリンは「弓に松やにを塗らないと音が出ない(ほんとに何も出ません)」こと、「指で押さえる位置はカンを鍛えるしかない」ことからはじまって、コンサートの途中で弦が切れた場合に備えて、予備の楽器を用意していて、演奏中に楽器を交換する練習もする」ことなど、結構一般には知られていないことも多いよね。そういうことをひとつひとつ知っていく過程はおもしろかったし、合奏の醍醐味を知ったら一層楽しくなった。

たまには弾こうと思うんだけど、カンが鈍ってて指のポジションがとれないし、左手の指先にタコができて堅くなっていないと指がすぐに痛くなっちゃうんです。