【ドラマ】マルプラクティス~陰謀の処方箋~

英国リーズの地方病院を舞台に、医療過誤を巡って医師たちの気持ちや利害が衝突するドラマ。主人公ルシンダがあまりにも自分勝手なのだが、序盤は「こんな人いるよね」という気持ちで見ていた。しかし、これだけ勝手なことをしていながら、もっと強烈な巨悪がいたということで最終的に彼女は善人のような終わり方をする。これには大いに不満と言うか、やるせない気持ちにさせられた。

製薬会社のトップが病院の理事を兼任しているという設定も監査的な見方をすればあり得ないし、社会的に許容してはいけないと思うのだが、階級社会の英国なので不思議ではないというところだろうか。インド・パキスタン系のインターンが虐げられるという設定がいかにも英国的なので、あり得る話なのかもしれない。

ルシンダを演じるニアフ・アルガーは、アクの強い表情と個性をふんだんに表現する。救急医療に携わる医師としての矜持は持ちながらも、強烈な自信過剰と出世欲によって目が歪められてしまう。ただそれは、一刻を争う状況に置かれた救急医の宿命として、少ない言葉で端折って伝えることによるコミュニケーション・ロスが引き起こしているとも言える。

序盤ではルシンダの嫌な部分をじっくり見せ、そして複雑に絡み合う利害関係と巨悪の企みに以降してゆく構成は、なかなか見応えがある。極限状態の中で正義は果たせるのか。どう果たせばよいのか。この作品は、医療界に対してそんな投げ掛けをしているのかもしれない。