【映画】ナイブズ・アウト:グラスオニオン

「ナイブズ・アウト」の続編として位置づけられることに、ライアン・ジョンソン監督はご不満のようだ。確かに、この作品を鑑賞するにあたって「ナイブズ~」という事件あるいは状況との関連を想定する必要はなく、あくまで「探偵ブノワ・ブラン」シリーズでしかない。それこそ「ナイフ」は、一瞬これ見よがしに何本も並んだ包丁が映る程度でしかないので、マーケティングとしても成功しているとは言い難い。ただ、ライアンのもうひとつの不満である「劇場公開期間が短すぎる」については、Netflix製作であることを考えれば当然すぎる方針なので、変えられない与件と捉えるしかないだろう。

ストーリーはいかにもという展開ではあるが、張られた伏線めいたものの裏切り方も含め、非常に楽しめる。時系列を遡る手法は好きではないが、このような見せ方なら混乱もしないし、純粋に歓迎する。オチとしては「なるほど、そうくるか」という範囲のものではあるが、そこに至る筋道が凝っているのだ。登場人物たちは序盤にコロナ禍を反映したマスク姿から、ある仕掛けで解放されるのだが、このあたりの自然な流れも受け容れやすい。非常によく練り込まれた設定だと感じた。

そしてマーベルファンの僕にとっては、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のドラックス、「アイアン・フィスト」のコリーン、そして「ワンダヴィジョン」のアガタが競演するだけで、何となくワクワクしてしまう。コリーンいやジェシカ・ヘンウィックの出演シーンは少なく、やや劣化したような印象の設定は残念だったが、存在感は示していたように思う。ブノワ・ブランのポジショニングも定まってきたので、まったく異なる設定での続編が続いてゆくことに、大いに期待したい。