【BJKカップ】日本―ウクライナ Day-1

ビリージーンキングカッププレーオフは、ウクライナ有明コロシアムに迎えた。試合前の開会式ではウクライナ国歌が演奏され、スタンドに並ぶ青と黄色の国旗を見ているとロシアによる侵攻が現実味を帯びて感じられ、こうしてテニス観戦していることのありがたさを実感した。

第1試合は土居美咲とコスチュク。コスチュクはインスタに"Lost in Tokyo"というコメントをつけて、夜の渋谷を楽しむ画像を上げていた。ミヤシタパークの渋谷横丁で飲んでいる様子からは、試合を控えたプロテニス選手という雰囲気は感じられず、リラックスしているようだった。そんな効果もあってか、土居を相手に良いパフォーマンスを見せる。土居も決して悪くはなく、勝負どころでの逆クロスを効果的に使って食い下がる。それでもコスチュクが、ボディサーブなど嫌なところを攻めるファイティングスピリットで振り切った印象だ。

この試合は本当に見応えがあり、土居がコースや球種などで何を狙ったかよく理解できたのだが、ちょっとしたミスでネットにかけてしまったりという部分がもったいなかった。ただ、それを引き出したのはコスチュクのパワーと攻めるテニスだったのだから、仕方ないだろう。2時間に迫る試合だったが、あっという間に終わってしまったように感じるほど充実した内容だった。

そして迎えた第2試合は、内島萌夏とザワツカの対戦。ランキングだけ見れば内島の楽勝かと思えるが、デビスカップやBJKカップではランキングは当てにならない。ツアーに出ていないという理由でポイントが積み上がらない選手が、ダークホースになってしまうからだ。特にウクライナは戦禍という国内事情なので、ザワツカもその影響を受けているはずだ。

序盤は悪い入り方ではなかった内島だが、とにかくサーブが入らない。これがすべての始まりで、サーブを入れるのに苦労すれば、その後の展開に意識が向かない。結果的にウイナーを狙うことすらできず、相手のペースに陥ってしまう。ザワツカが「勝とう」というモチベーションを前面に押し出し、攻撃的なテニスを見せる一方で、返すだけの内島に勝機は見出せなかった。ベンチには土橋キャプテンが座っていたが、彼は「切り替えのきっかけを与えるコーチング」ができるタイプではないので、なす術がなかった。

将来のエースを期待する内島にとって、この試合の経験はネガティブなものでしかない。土曜日に使うのは難しいかもしれないが、このままこの大会でプレーしないとすれば彼女のキャリアに大きな禍根を残してしまうかもしれない。控えの石井さやかに託すという選択肢はあるが、それは石井に対しても内島に対しても、賭けになるだろう。

そう考えると、内島、石井という人選は正しかったのか疑問を抱く。奈良が引退して日比野もツアーの離脱から復帰した状況ということを考えれば、選択肢はさほど多くはなかったので致し方ないとも思える。そんな中で、速いコートの有明コロシアムウクライナ相手に選んでしまったことも、日本にとっては不利に働いているように思う。細かいことを言えば、サーブに苦しんでいる内島がトスアップしようというタイミングで観客がくしゃみをしたり、カメラクルーが大きな音を立てたりと、もう少し配慮して欲しいと思える場面も散見された。何が何でも勝つという体制ではない日本に対し、ウクライナの盛大な応援は心強かったことだろう。