【映画】隔たる世界の2人

映画とは言っても30分ほどの短編で、アカデミー賞の短編映画賞を受賞した「隔たる世界の2人(原題:Two Distant Streangers」。奥渋谷のコーヒースタンドThe LATTE Tokyoのエイジさんが「何の事前情報も持たずに見てほしい」とオススメしてくれたのでNetflixで見てみた。もっとコメディ寄りの作品かと思いきや、これでもかというくらいに風刺の効いた内容で、米国の人種問題、いわゆるBlack Lives Matterを扱ったものだった。

同じ場面をタイムループするという設定だが、そこから抜け出そうともがいても結局は別のシナリオが用意されていて同じ運命が待っている主人公のカーター。ジョージ・フロイド事件を思わせる台詞があったり、ジョージを殺害した警察官ショーヴィンに似た雰囲気の警官が登場したり。ブラックコメディというわけでもなく、人種差別問題に関わる主張が淡々と描かれる。押しつけがましくもなく、最後にカーターの決意が示される流れは、感情的になりがちなこの問題を考えるにはよいトーンだったように思う。

カーターの飼い犬の名前が「ジーター」で、ショーヴィンと同じデレクがファーストネームの野球選手にちなんでいたり、銃弾を受けて広がる血の海がアフリカ大陸の形だったりと、仕掛けも多彩だ。あまり堅苦しくならずに人種問題を考えるきっかけを得ることができる、そんな作品だ。その意味では、30分という尺の長さはちょうどよい。