【フィギュア世界選手権】アイスダンスRD

ウクライナのナザロワ/ニキーチン組の演技を迎え、モンペリエの観客はふたりの登場から温かい雰囲気だった。平和を意味する"Peace"や"Paix"などの単語が並び旗や"We Stand with You"というような連帯を示す言葉が加えられたウクライナ国旗が振られる中、アイスダンスの衣装としては地味ないでたちのふたりは、ナザロワが黄色、ニキーチンが青のTシャツを着用していた、演技が始まり、そのぎこちなさに練習ができない環境を思わせたが、それにしても違和感がある。プログラムに使用された曲からも、民族音楽のようなメロディが感じられ、一緒に見ていた妻も「プログラムを変えたのでは?」と思ったようだ。

調べてみると、これはウクライナ人のシンガー「ジャマラ(Jamala)」による「1944」という曲で、ロシアがクリミアに先住していた20万人以上のタタール人を強制移住という形で排除したことを歌っていることがわかった。ジャマラ自身も、父親がクリミアン・タタールのようだ。静かでぎこちない演技ではあったが、その中に籠められた強烈なメッセージがわかると、そのあまりの深さに驚愕するとともにウクライナの平和を思わずにはいられなくなった。

パパダキス/シゼロン組が92.73という驚異的な高得点をたたき出す一方で、村本哉中/髙橋大輔組は、髙橋がツイズルで引っかかってしまったり、ステップ・シークエンスでレベルが取れなかったりと冴えない結果になってしまったことが残念だ。FDはナザロワ\/ニキーチンの直後が「かなだい」ということになりそうなので、会場の雰囲気を考えても巻き返しは容易ではないだろう。