【アマンダ・ゴーマン】The Hill We Climb

バイデン大統領の就任式で朗読されたAmanda Gormanの詩"The Hill We Climb"の原著を丸善で見つけたので、時間をかけて読んで和訳してみたのだが、その中で新たな気づきがいろいろあった。僕は仕事でもプライベートでも、文章を書くときには「読んだときの音や流れ」をいつも気にしている。省いた方がすっきりするけれど、読んだ時のリズムが悪くなるなら、僕はその語を残す。それはまさに詩を翻訳する作業にもつながり、やはり僕の原点は中高生時代に曲をつけるための詞を書いていたことなのだと気づかされた。

また、タイトルの"The Hill We Climb"は一般的に「私たちがのぼる丘」と訳されているが、詩の中では"The hill we climb, if only we dare it"と続く。僕はこの部分を「丘を登るのは、労を惜しまない者」としてみたが、日本語には変換しにくい難しさを感じた。大事なことは、「丘」の話をしているのではなく「私たちがのぼる」部分にこそあるのだ。それはタイトルのせいでもあるのだが、本質が見えなくなってしまっている懸念を感じた。

やはり、日本語にした詩には、やまと言葉が似つかわしい。「分断」と言わずに「分かつ(こと)」とした方が耳にも心地よいし、意味するところがより適切に伝わる。詩に限ったことではないが、翻訳においては語彙が大きくものを言う。特に韻文では、韻文にふさわしい語をどれだけ知っているかで、出来上がりのクオリティはまったく異なってしまうのだ。