【映画】ドリーム

JFKの時代、そして米ソ冷戦の時代。軍拡と宇宙開発の先陣争いという中で、いまだに人種差別の真っただ中にあった米国の空気感が見事に表現された映画だった。原題は「Hidden Figures」なので、自らの夢を成就させた3人の黒人女性の主観にフォーカスを当てた邦題に対して、米国社会を主体にして「隠れた人材を見出したこと」がテーマとして扱われている側面を意識する必要がありそうだ。

キャスティングも、ドラマファンにはうれしい。主人公に「EMPIRE」のクッキーや「パーソン・オブ・インタレスト」のカーターで知られるタラジ・P・ヘンソンを配し、「ビッグバン・セオリー」でシェルドンを演じるジム・パーソンズも重要な役どころを与えられている。そして脇をベテランのケビン・コスナーオクタヴィア・スペンサーマハーシャラ・アリが締めるのだから、演技面では見どころが満載だ。

2時間を超える長さながら、最後まで集中力を削がれることもなく、一気に見せてくれる展開は素晴らしい。導入されたばかりのIBMのコンピュータや技師たちが「パフォーマンスを発揮できない」ことを揶揄するような見せ方は、その時代のIT技術の状況を垣間見させてくれるし、今の進化をあらためて驚くしかない。この時代を経験してこその、現代の便利さなのだ。