【参院選】真の政治家出でよ

投票終了時刻と同時に発表された出口調査の結果によって、自民党の大敗・民主党の圧勝が予測されている。僕自身はどの党派の支持者でもなく、必ずしも自分の望んだ結果通りになったわけではないが、この結果は妥当と考えている。ただ、民主党は小沢党首の政治生命を賭けた選挙戦で勝ったわけではなく、あくまで自民党オウンゴール、あるいは「試しにやってみろ」という有権者の声であろう。

開票速報を見ていると、各地で若い候補、マスコミ経験者の優勢が目につく。これを単に「世代交代」「人気投票」と見るだけでは、今回の選挙結果の本質を見失うのではないか。自民党オウンゴールとは、つまり閣僚を中心とするあまりにも不用意で稚拙な発言とマスコミ戦略のなさだ。

久間防衛相の「原爆しょうがない発言」も安倍首相の「その時代の厚生相は菅さん」発言も、理解できない内容ではない。防衛省のトップとして自ら招いたものではあるが米国との関係修復も視野に入れながら、長崎選出の国会議員として「長崎の犠牲によって、多くの人命を救った」という自尊の念を僕は理解するし、同時にそれを理解しない人がいることも了解する。長年の官僚の業務怠慢を一政党や首相、厚生相の責任に帰するものではないことも当然で、自民党はもっとそのことをうまく主張すべきであった。

しかしながら、それらができずに理屈を破綻させてしまったのも、紛れもなく自民党だ。まともな企業であれば要職者の対外発言はあらかじめ法務部や広報部のチェックを経るものだが、そのような機能すら働かない政権政党は問題だ。かつて「票田のトラクター」というマンガがあったが、組織にあぐらをかいて長期的な視野に立った政策を立案・実行してこなかったツケが、まさに今回ってきたのだ。

若い候補、マスコミ経験者の健闘を、僕は「世代交代」「人気投票」ではなく「政策の立案・実行ができる真の政治家の登場」を有権者が待っているということだと考える。各政党は単に得票の数だけでなく、その真意までしっかりと振り返って今後のつなげて欲しい。それができなければ、有権者は失望することになる。そのときは自分が立候補するか、政党を作るしかない。それが民主主義なのである。