【東京都美術館】エル・グレコ展

僕にとってのエル・グレコは、今回ではなく8年前の年末年始に訪れたニューヨーク。メトロポリタン美術館で開催されていた展覧会を、大混雑の中で鑑賞したことです。メトロポリタンでは混雑しても作品がよく見えるように展示位置が高めで、天井までフルに使っていたことをよく覚えています。

土曜日に開幕したこの展覧会は、それほど混んでいなかったのでじっくりとエル・グレコの世界観に浸ることができました。「エル・グレコ」とは「あのギリシャ人」という意味のイタリア語で、本名をドメニコス・テオトコプーロスというギリシャ人です。この展覧会で一番感じたのは、彼の色彩配置の巧みさとメリハリの利いたコントラストの妙でした。デッサンのスキルは怪しく、モチーフのバランスも決してうまくない。彼の描いたマグダラのマリアは掌が大き過ぎるし、表情もどこかしら平板です。それでも、作品にオーラを与えているのは、やはり色彩とコントラストなのでしょう。

それを如実に感じたのは、「羊飼いの礼拝」と「無原罪のお宿り」。暗い背景色の中に浮かぶ、原色ではないほどよい中間色を使った赤、青、黄、緑が配されて、独特の世界を作り上げています。そして光の当たり方による色の濃淡が、背景色との対比でとても美しく浮かび上がるのです。残念ながら僕にはキリスト教の知識があまりないので、モチーフの背景は十分に理解できていません。それがわかると、さらに彼の世界に近づけるのだと思います。

http://www.el-greco.jp/