【人事の話】誰のための人事か

営業や企画などの職種は「顧客満足」を目指して仕事をしていることと思いますが、それでは人事や総務のような職種にとって目指すものは何でしょうか。僕は第一義には社員がお客様で、彼らの満足度を上げることだと思っていますが、その先には企業にとっての顧客がいることは忘れてはいけないとも思っています。

先日、ある人が「人事も企業にとっての顧客だけを見るべきで、社員の満足を考えるべきではない」という趣旨の意見を書いているのを目にしました。これは正直なところ、危険な発想だと思います。企業が株主のもので、株主価値を最大化することが企業活動だといわれていた時期もありますが、最近では少しこの色合いは薄れています。ステークホルダー全員が満足する方向を目指すのであれば、そこには株主も顧客も、そして社員ももちろん含まれるのです。

社員満足を無視して株主価値や顧客満足だけが一人歩きするとどうなるか。それは、世の中にある「ブラック企業」と呼ばれる会社がいみじくも示してくれていますね。健康を害するくらいの過重労働にサービス残業、劣悪なオフィス環境。そういったことを排除することも、すなわち社員満足の向上です。さらにポジティブな環境を作ることこそ、人事が目指すべきものなのだと思っています。