【上村松園展】結実する変遷

竹橋の東京国立近代美術館で来週末まで開催されている「上村松園展」に、駆け込みで行ってきました。日本経済新聞の主催に加え、最近テレビ番組でも相次いで取り上げられた中での連休とあって、驚くような人出でした。当日券の列が30分待ちということは、「タダ券もらったから見に来た」というわけではない積極的なアートファンが多かったのでしょうね。小雨の中、流れは順調にさばかれていました。

さて、展示ですが、この構成が見事です。まず最初に展示されている初期の作品では、人物に表情がほとんど感じられません。艶やかなはずの浴後も雪を突いて歩く苦難も、表情を変えず淡々とした人物がそこにいます。特に外国人から見たら、異質さばかりが目につきそうな、そんな作品群からスタートします。そして、次のコーナーでは一気に表情豊かになる作品たち。それほど派手な変化ではないのですが、微妙な描き分けを十分に感じることができます。

そして終盤は、松園の画風が結実し、一気に開花した印象。特に印象に残ったのは、幼子を抱いて微笑む母を描いた「母子」や屏風の特製を活かした構図が素晴らしい「虹を見る」です。構図や色彩が一気に存在感を増し、そこに一瞬の対象の表情を封じ込める技法が確立されたように思いました。キュレーターの意図がはっきりとわかり、非常に見やすい展覧会です。会期は来週の日曜日までなので、混雑は必至。来場される際は、覚悟して行ってくださいね。

http://www.momat.go.jp/Honkan/uemura_shoen_2010/index.html#advice